遺伝カウンセリングではどんなことをするのですか?
遺伝カウンセリングでは、遺伝に関わる悩みや不安、疑問などを持たれている方々に、科学的根拠に基づく正確な医学的情報を分かりやすくお伝えし、理解していただけるようにお手伝いいたします。
「カウンセリング」というと気持ちの問題をサポートしてくださるのですか?
単に情報をお伝えするだけではなく、十分にお話をうかがい、抱えている悩みについて私たちも一緒に考えていきます。医療技術や医学情報を利用して、ご本人の意思を尊重しながら問題の解決に向かっていけるよう、心理面や社会面も含めた支援を行うのが遺伝カウンセリングなんです。
どんな人が遺伝カウンセリングの対象になりますか?
ご病気をお持ちの方もそうでないかたも、遺伝カウンセリング目的に受診なさることがあります。
皆さんどのような状況から遺伝カウンセリングを受けておられるのですか?
検査の結果で遺伝性が疑われた方。
生まれてくる子どものことが心配で相談したいと思われた方。
主治医から紹介されたり、ご自身で直接問い合わせをして受診したり、年齢も様々です。
それだけ今の時代は、遺伝のことを身近に感じる状況が様々あるということですね。
遺伝カウンセリングでは、何が相談できますか?
遺伝に関することなら当事者、ご家族を問わず、一人で悩まず、何でも相談してください。例えば、
・子どもが遺伝病と言われた。家族に同じ病気の人はいないのになぜ?
・遺伝性の病気と診断された。病気についてもっと詳しく知りたい。
・次の子どもがほしいけど、遺伝の話をふまえて相談していきたい。
・最近親が遺伝子の病気と診断された。将来自分も同じ病気になるのではないかと不安。
・高年妊娠だけどおなかの赤ちゃんに染色体異常がないだろうか?
など、遺伝に関する相談に対応しています。
遺伝カウンセリングとして相談できない内容はありますか?
例えば親子鑑定をしてほしいというご相談とかは遺伝カウンセリングではないですね。
遺伝カウンセリングでは医師とお話しするということですか?
遺伝カウンセリングを専門とする職種は、臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラー®になります。ここでは、その2つの専門職について説明します。実際にご自身に対応するのが誰なのかについては、各医療機関にお問い合わせ下さい。
臨床遺伝専門医
現在、遺伝学的診断(遺伝情報を調べる検査など)は、多くの診療科で通常の医療として取り扱われています。このため、全ての医師が、基本的な遺伝カウンセリングに対応出来ることが理想とされています。しかし、実際の遺伝に関わる問題の中には、対応が難しいものもあります。例えば、出生前診断や、これから自分が病気になるかを調べる発症前診断、自分自身は病気になりませんが次世代への影響を調べる保因者診断などです。これらの高度な遺伝カウンセリングに対応する医師が、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同で認定している、臨床遺伝専門医です。 臨床遺伝専門医の一覧は、臨床遺伝専門医制度委員会ホームページからご覧いただけます。
認定遺伝カウンセラー®
遺伝に関わる思いと向き合っていくうえでは、ご自身やご家族の病気や将来について、自分自身で考え、何らかの選択をする必要のある場面を経験することもあります。遺伝子や染色体の検査を受けるかどうかについて考え、決めることはその場面の一つです。それらのような場面では、からだや遺伝に関する医学的なことだけでなく、それにまつわる心理的なこと、社会的なことについてもサポートが必要と感じることがあるでしょう。そのような場合に、皆さまが直面する医学的、心理的、社会的な課題を整理したり、医療情報はもとより福祉や療育に関する情報(社会資源)について皆さまにお伝えしたりすることで、ご自身が納得のできるようにサポートするのが、認定遺伝カウンセラーです。
認定遺伝カウンセラーは医師ではなく、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同で認定している遺伝医療の専門家です。
認定遺伝カウンセラーの名簿は、認定遺伝カウンセラー制度委員会ホームページからご覧いただけます。
どこにいったら受けられますか?
かかりつけの医療機関がある方は、まず、そちらで相談なさると良いでしょう。
相談する場所がない場合や、それが難しい時には、実際の遺伝カウンセリングを行っている施設を、全国遺伝子医療部門連絡会議のホームページにある「遺伝子医療実施施設検索システム」からある程度調べることもできます。上述のHPに掲載されていない施設でも、遺伝子診療部門や遺伝外来などの名称で対応していることがあります。
遺伝カウンセリングを受けたい場合、主治医の先生へ何と相談すればよいでしょうか?
お話のきっかけとしてはこのような例があると思います。
「遺伝カウンセリングを受けたいのですが、どのような手順で予約すればよいでしょうか?」
「認定遺伝カウンセラーからお話を聞くことはできますか?」
かかりつけの医療機関がない場合などには、受診を希望する遺伝カウンセリング実施施設に直接連絡の上、受診予約をとる流れが考えられます。
遺伝子検査(遺伝学的検査)は簡単に受けられますか?
遺伝学的検査の大部分は、一生のあいだ変化しない個人の遺伝子情報を検査するものです。遺伝子の情報は、個人情報である一方、血縁者とも情報の一部が共有されています。このため、ひとりの遺伝子検査結果が出ることで、血縁者にも同じ遺伝子の変化がみつかる可能性が明らかになることもあります。検査の前に詳しく知って考えておいたほうが良いこともあるので、遺伝カウンセリングの機会があるんです。
遺伝カウンセリングを受けたら遺伝子検査を受けなければならないですか?
遺伝カウンセリングを受けたからといって、必ず遺伝子検査しなければならないということはありませんよ。
遺伝カウンセリングの費用はいくらかかりますか?
特定の遺伝性疾患に対して遺伝学的検査を行った後の遺伝カウンセリングでは、保険が適用される場合があります。この場合は、他の診察費に加えて10,000円となります(令和6年4月現在3割負担であれば3,000円となります)。
その他の場合には原則として自由診療になっており、施設ごとに料金が設定されています。一般的には5,000円~10,000円程度の施設が多いようです。当然、これより高い施設も安い施設もありますので、詳細は受診前に遺伝カウンセリングを受けようとしている施設にお問い合わせください。
遺伝子検査(遺伝学的検査)の費用はいくらかかりますか?
多くの施設でできる保険診療の遺伝子検査が増えてきました。保険でできる検査は、全施設同じ料金です。ただし、保険の検査項目ごとに異なる料金設定があります。保険でできない遺伝子検査は自由診療(自費で全額自己負担)として、施設ごとにできるできないがあり、施設ごとに検査料金が決められていますので、詳しくは各医療機関や主治医にお問い合わせください。
認定遺伝カウンセラーになりたいのですが、どのようにしたらなれますか?
まずは、遺伝カウンセラー認定養成課程を設置している大学院を探し、入学に必要な条件など、詳細を調べましょう。養成校一覧は、認定遺伝カウンセラー制度委員会のホームページから確認できます。
大学院を修了することで、認定遺伝カウンセラー認定試験の受験資格を得ることができます。
認定遺伝カウンセラーは医療資格を持っていなくてもなれるのですか?
認定遺伝カウンセラーは、看護師など医療資格を持つ人もそうでない人も目指せる資格で、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会の両学会によって認定されている資格です。詳しくは、日本認定遺伝カウンセラー協会のホームページもぜひご参考になさってください。
(Ver.1.0: 2022年3月)
作成担当:日本遺伝カウンセリング学会 情報ネットワーク委員会2021
*本記事に記載されている内容の一部,または全てを引用する場合,必ず本学会からの引用であることを明示してください。
*“認定遺伝カウンセラー”という名称は商標登録されています(登録番号:第6115393号)。